潮風マラソン2017で初フルでサブ4をやってみようと思った話。2
『前哨戦』
5/ 19 大会2日前…
さて、この日は娘とせがれの通う中学校のチャレンジウォーク(ようは長い距離を歩く遠足)です。
まあ、学校から父兄にボランティアの依頼がくるわけですよ。
二日後に潮風マラソンを控えていたので悩んだんですがね、
娘も今年で最後だし、午後からチョロっと参加して協力してる感だけ出そうと思い参加を決意しました。
ただ会社はしっかり朝から休みを取ってあります。
おっさんが合流する午後の行程は、潮風マラソンの32キロ地点からゴールまでとだだ被り。
大河内の激坂を上り、海を目指すルートです。
とりあえず午後の部は12時に出発するってんで、
おっさん10時過ぎに家を出て、軽くジョグしながら11時に味の横綱か、近くのそば屋で昼飯を食ってから隊列にしれっと潜り込む作戦を立案しました。
(気がつけばおっさん作戦)
明後日の潮風マラソンを見据え、午後の出発地点まで5~6キロのジョグ。
そして麺類でカーボローディング。
そしてチョロッと歩いて学校への貢献。
我ながら良い作戦です。
秋山真之もクリビツな一石三鳥の波状攻撃です。
朝、家族を送り出し、家の掃除をし、風呂を洗います。(カミサンへのじょんぎ)
こういうの大事ですよね。
終わると、少し前に痛めた右膝と、若干違和感のある両アキレス腱にテーピングを施します。
やり方はネット頼み。
便利な世の中です。
いつものジョギングの支度をし、出発までの時間家の前でやわやわと体をほぐします。
チャレンジウォークとか格好いいネーミングですが、平たく言えばただの遠足。
なのにおっさんはジョガーな格好です。
無論、リュックや水筒の類も持ちません。
そうこうしてると10時を過ぎたので、そそくさと家を出ます。
両脚の状態を確かめるように、ゆっくりと走り出します。
幸い強い痛みはなく、これならレース本番も何とかなるなと一安心しました。
空は雲一つない正にスカイブルー。
少し走ると、街路樹の若葉に日が当たって綺麗な光陰をつくり、爽やかな風がそれをそっと揺らしています。
まさに風薫る5月。
最高のジョギング日和です。
ペースはキロ6分。フォームを確認しながら進みます。
膝を痛め、一週間程練習を休んでいたおかげか体が軽い。
スイスイと気持ちよく走ります。
さて3、4キロ走った頃でしょうか、おっさんの横を通り過ぎようとした車から突然声が掛かります。
白い業務用の軽自動車、無駄にサイドを刈り上げた頭、そしてやたら白い顔の男がこちらを見ながらニヤニヤしています。
純です。
純「おぇ、頑張ってんねっけ~」
お「うん…」
純「さっき中学生の集団が歩いてんの見たでぃ~、こないだ言ってた遠足らろ?」
お「そ、そうだよ…」
純「へぇ、コミセン(昼食場所)出発してたもんもいたでぃー」
お「え…?」
純「まあ、あんま走り過ぎんなやの!じゃあの」ブーン
お「…」
…マジか、まだ10時50分だぞ!
予定より1時間以上早いじゃねーか!
純、教えてくれてありがとうな。
もし知らなかったら、横綱でマッタリと黒ラーメン背脂入り食って、コミセンに着いた頃にはもぬけの殻だったわ。
なかなかやりおるわい中学生め、おっさんを欺こうと幸村ばりの策をめぐらせたな。
心からサンキュー純。
でもな純、こないだも言ったけど一歩間違うとお前、中学生の集団を付け狙ってストーキングしてる性犯罪者に見えるからな。
気をつけろな純…。
グッバイ純…。
そしてグッドラック純…。
さて、戦況は一気におっさんが不利に。
とりあえずペースを上げてコミセンを目指します。
キロ5分30秒、10秒、4分50秒…と上がった所で集団の尻尾を捕まえます。
場所はコミセンの手前200メートル。
ハァハァ言いながら追い掛けてくるおっさんに、生徒は怯えています。
純より先におっさんが警察のご厄介になりそうな勢いです。
ごめんなさい。
一気にコミセンに駆け込むおっさん。
すると、今まさにコミセンに上がり込もうとしている集団が。
その中に娘がいました。
む「なにやってんの??」
お「いや、さっき純に会ってかくかくしかじか」
む「なに?じゃあ私についてくるの?嫌だよ、せがれの方に行ってよ!」イライラ
む「絶対無理だから!」怒
お「‥…(ここまで走って来たんだよ!昼ご飯だって食べてないんだから!)」
お「お、おぅ…」(泣)
これが思春期的反抗期なのね…。
おっさん自然と目から溢れる汁を拭ってキッとコミセンの出口に顔を向けます。
そこにはすでに出発しているグループがちらほら。
するとこないだ飲み会で一緒になった美人先生がおっさんを見つけ駆け寄ってきました。
せ「おっさんさん、ご苦労様です。いつもありがとうございます!」
せ「どうされたんですか?走ってこられたんですか?しゅごーい!」
か、可愛い…、可愛いんだ先生
先生にスゴーイとか言われた、出来れば夜の部で言わs…
いやいやいかん!
先生と付き合うとかダメなやつだろ。
これネットで拡散されるやつや。
すぐさま
お「こちらこそお世話になります!ときに先生、うちのせがれはどこにいますでしょうか?」
せ「はい、せがれ君なら相当前に颯爽と先頭で出発して行きましたよ!今年はみんながよく頑張って歩いてくれて、予定より1時間以上早まってます!」
お「そうですか…うぅ…」
ぐうの音も出ないとはこのことですね。
つーか、予定は守ろうよ。
そういうのも大事だろ…。
さて困った。
娘にはこっちに来るなと言われ、せがれは山向こう。
選択肢は2つ。
蕎麦屋で急いで昼飯を食い、全然知らない中学生と残り15キロを魚の腐ったような目で行軍するか、このまま山を駆け上がり先頭のせがれを追うか…。
「よし、追うか…」
時間はそう掛からなかった。
有能な指揮官はその判断も早いという。
既に一石三鳥作戦の二羽は逃げた。
ところで
「二兎を追うものは一兎も得ず」
「一石二鳥」
どっちなんだよ先生…。
まあいい。
無論この作戦変更では昼飯は食べれない。
そう言えば、ラーメンだか蕎麦だかを美味しく食べようと、朝飯も抜いていたことに気付く。
「なあに、当たらなければどうということはない」
調整ジョグは一気に山登りの練習へ、
本番前のカーボローディングはフルマラソン終盤のグリコーゲン枯渇状態の体験へと変貌した。
コミセンの出口で靴ひもを結び直す。
頼んだぜGT2000NY。
「この靴でなら行けると思う…」
新道の信号を渡り、サングラスをグイッと下ろした。
信号の誘導をしていた美人先生に一礼をする。
ガーミンを再起動、GPSを捕まえブルッと唸った。
そして走りだしたんだ。
二日後の同刻に、命を掛けた闘いを繰り広げるであろう大河内モンスターに向かって…。
つづく